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政 治

レソトはもちろん近代的な法治国家です。しかし、その歴史的な経緯から伝統的な部族社会が温存されています。地方ではそれが特に顕著で、レソトの大きな特徴です。

政治体制

      レツィエ3世
レソトは議院内閣制の立憲君主制国家です。首相は行政府の長であり、内閣を総括します。国王には行政上の権限はなく、儀礼的な役割りのみを有します。王位はセーイソ家の世襲で、現在の国王レツィエ3世は先代の国王モショエショエ2世の息子であり、初代国王モショエショエ1世の直系の子孫です。

立法(議会)

             国会議事堂
議会は下院(国民議会:National Assembly)と上院(元老院:Senate)からなる二院制です。下院は120議席で、そのうち80議席が小選挙区、40議席が比例代表制で選出されます。任期は5年です。
上院は22人の主要部族長(Principal Chief)、下院の多数政党が指名する11人、合計33議席で構成されています。主要部族長の議席は世襲です。上院は下院から送られた法案を審議し、下院に対し修正を要求することができますが、却下することはできません。法案は両院を通過し、国王が署名する事で発行します。



行政(内閣)

            首相官邸
国王は下院の多数党の党首を首相に任命します。首相は両議会議員の中から大臣を指名し、国王が任命します。大臣は各担当省庁を指揮します。内閣府、農業省、通信科学工業省、教育訓練省、財務省、エネルギー省、など26の省庁があります。
また、内閣は必要な法案を立案し、両院に発議します。法案は両院で審議され、承認または修正され、あるいは却下されます。


司法(裁判所)

            最高裁判所
司法は、最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所によって構成されています。陪審員制はありません。地方裁判所は10県それぞれに複数置かれています。
レソトの法律は一般法と慣習法からなっています。一般法は議会が制定したものですが、慣習法はその地方の慣習を文書化したものです。一般法と慣習法のどちらが適用されるかは、事件の性質などから決定されます。都市部では一般法が適用される事が多いのに対し、農村部では慣習法が頻繁に適用されます。

余談

レソトの最高裁判所と高等裁判所の裁判官の多くは実は南アフリカ人です。裁判官は極めて高度な専門職なので、国内では人材を供給できないのかもしれません。同僚に聞いたところでは「第三者的な立場で判決をしてもらうためだ」と言っていましたが、どうでしょうか。


地方自治

レソトの基礎自治体は自治市(Municipal Council)、市(Urban Council)、村落(Community Council)の三種類があり、それぞれ議会があります。いずれの議会も7名から15名の選挙で選ばれた議員と2名から3名の世襲の部族長(Chief)議員からなります。自治市は首都マセルのみ、市は全国で11、村落は64あります。それぞれが下院議員の選挙区になっています。

各村落は複数の小集落からなり、各小集落には部族長がいます。部族長の地位は世襲ですが、その役割は伝統的・象徴的なものです。それぞれの部族長は主要部族長(Principal Chief)に属しています。主要部族長は全国で22名いて、上院に世襲の議席を持っています。



さらにレソトは10の県(District)から構成されていて、市と村落は県に属します。ただし、自治市(マセル)だけは県に属さず、独立しています。県知事(District Administrator)は政府から派遣され、県議会議員は市や村落が指名します。

レソトのほぼ中央に位置するタバテカ(Thaba-Tseka)県の県都タバテカ。と言っても人口1万5千人程の小さな町、レソトでは市、です。
各県の人口は、マセル市のあるマセル県で約52万人、マセル県に次ぐ規模のベレア県で約26万人です。

余談

iLesothoでは「District」を「県」と訳していますが、これは微妙なところです。上述したように県知事は政府から派遣された公務員で、県議会の議員は基礎自治体から派遣されており、両者とも選挙で選ばれた訳ではありません。ですから、「District」は自治体というより、政府と基礎自治体の調整機関と言った方が正確でしょう。















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